ニコチン依存症
喫煙による今まで報告されている健康被害は、自分自身が吸うことによる能動喫煙で起こる悪性腫瘍(肺がん、喉頭がん、食道がん等)、狭心症、心筋梗塞等の虚血性心疾患、脳梗塞、脳出血等の脳血管障害、慢性気管支炎、肺気腫等の慢性肺疾患などと、妊娠中の喫煙は、ニコチンと一酸化炭素により低体重児、流産、早産、死産、乳幼児突然死症候群、先天奇形などの以上が増加します。他人のタバコの煙を吸わされる受動喫煙は、副流煙中の有害物質(60種以上の発ガン物質)が多く含まれ、両親の喫煙では子供の気管支炎、気管支喘息、肺炎、中耳炎が増加します。
今まで禁煙を自己流で行い、失敗した経験はございませんか?禁煙したいけれど自信がない、これまで自分で禁煙をしたけれど、うまくいかなかったのはなぜでしょう?それは、タバコの煙に含まれるニコチンが、麻薬にも劣らない強い依存性を持つからです。
喫煙する習慣の本質は「ニコチン依存症」という病気です。タバコを吸うと、ニコチンが数秒で脳に達し、快感を生じさせるドパミンを放出させます。このドパミンによって、喫煙者は快感を味わいます。同時に、またもう一度タバコを吸いたいと欲求が生じます。その結果、次の1本を吸って再び快感を得て、さらに次の1本がほしくなるという悪循環に陥ります。この状態がニコチン依存症(=喫煙の習慣)です。
これまでわが国では、禁煙治療は自費で行われてきましたが、2006年4月から禁煙治療が保険適応(条件あり)されることになり、2008年5月から一部のニコチンパッチが薬局で購入できるようになり、2008年5月から禁煙の経口薬が禁煙外来で投与できるようになりました。
医師の指導により禁煙のお薬を使用した方が、保険適応ですので経済的・時間的にも短期間で禁煙をすることができます。
保険診療で禁煙治療を受けるためには
- 下記の要件を満たす患者さんは禁煙治療を保険診療で受けられます。チェックしてみて下さい。
- TDS:Tobacco Dependence Screeener(ニコチン依存症に係るスクリーニングテスト) 5点以上
- ブリンクマン指数:禁煙本数/日 × 喫煙年数 = 200以上
- 直ちに禁煙することを希望し、禁煙治療を受けることを文書で同意
- 初めて禁煙治療を受ける、もしくは前回の禁煙治療から1年経過
-
はい
(1点)いいえ
(0点)1 自分が吸うよりも、ずっと多くタバコを吸ってしまうことがありましたか? 2 禁煙や本数を減らそうと試みて、できなかったことがありましたか? 3 禁煙したり本数を減らそうとしたときに、タバコがほしくてたまらなくなることがありましたか? 4 禁煙したり本数を減らしたときに、次のどれかがありましたか?
(イライラ、神経質、落ち着かない、集中しにくい、ゆううつ、頭痛、眠気、胃のむかつき、脈が遅い、手のふるえ、食欲または体重増加)5 上の症状を消すために、またタバコを吸い始めることがありましたか? 6 重い病気にかかったときに、タバコはよくないとわかっているのに吸うことがありましたか? 7 タバコのために自分に健康被害が起きているとわかっていても、吸うことがありましたか? 8 タバコのために自分に精神的問題が(注1)起きているとわかっていても、吸うことがありましたか? 9 自分はタバコに依存していると感じることがありましたか? 10 タバコが吸えないような仕事やつきあいを避けることが何度かありましたか? - 保険診療の場合、お薬を使用した禁煙治療における患者さんの自己負担額(3割負担の場合は、約1万7千円程度です。
※平成26年4月からの診療報酬改正により若干の違いがあります。
保険診療による禁煙治療のスケジュール
標準的な禁煙治療プログラムでは、12週間にわたり計5回の禁煙治療を行います。
服用方法
禁煙の開始予定日を決めその1週間前から服用します。
1日目~3日目:0.5mg錠を1日1回食後(朝・昼・夕は問いません)
4日目~7日目:0.5mg錠を1日2回朝・夕食後
8日目に禁煙を開始します。
8日目~14日目:1mgを1日2回朝・夕食後
1mg1日2回の投与を12週まで続けます。
禁煙に成功した患者では長期間の禁煙をより確実にするために、必要に応じて1mgを1日2回、12週間にわたり延長投与することができます。
服用するにあたっての注意
次の場合、服用前に医師にお申し出ください。
腎臓の病気がある
妊娠中または授乳中である
他に服用中の薬がある
未成年者である
以前に薬を飲んで、かゆみや発疹などのアレルギー症状が出たことがある
主な副作用
吐き気、頭痛、上腹部痛、便秘、お腹のハリ、普段と違う夢を見る、不眠
以下の症状が現れた場合、服用を中止し医師にご相談ください。
禁煙は治療の有無にかかわらず様々な症状(気分が落ち込む、あせりを感じる、不安を感じる等)を伴うことが報告されています。また、もともとこのような症状がある場合は、その症状が強く出ることがあります。お薬を服用中にこのような症状が現れたら、服用を中止し医師にご相談ください。
以下の事項にご注意ください。
ニコチンを含んだ禁煙補助薬(ニコチン製剤)との併用はしないでください。めまい、眠気などの症状があらわれることがあるため、自動車の運転など危険を伴う機械を操作する時はご注意してください。